「逆に器用だよね、両腕骨折とかさ」
「・・・面目ない」


そう言って俺に食事を食べさせてもらっているのは恋人のなまえだ。
任務で大ケガをしたと聞いたのは今日の朝で、慌てて蝶屋敷に戻ってきた。
部屋に入ると、なまえはけろっとしていて、両腕やっちゃったー、とか言っていた。
まぁ、命に別条がなくて安心したけど。


「私も両腕骨折は初めてだよ。不便だーご飯もひとりで食べられない!」
「それくらい、今みたいに俺が食べさせてあげるよ」
「善逸も任務とかあるでしょ。でもありがと!」
「何ならお風呂も一緒に」
「謹んで遠慮いたします」
「えぇっ!?なんでぇ!?」
「当たり前でしょ!?」




油断も隙もない、とぷりぷり怒っているなまえも可愛いんだけどさ。
でも両腕が不自由とかさ、ちょっとオイタしても抵抗できないってことだよね?
そう思うと、俺の中のイタズラ心がひょっこりと顔を出してきた。
















「ねぇなまえ」
「もう、な・・・ぅんっ!」

いきなりなまえに口付け、両腕が使えず勢いよく後ろに倒れそうになる彼女の後頭部を支えながらベッドへ押し倒した。
そしてなまえが抵抗できないのをいいことに、その柔らかい唇を存分に堪能してから唇を離した。


「ん、ふっ・・・はっ!ちょ、怪我人に配慮ってもんがないの!?」
「えー?すっごく気を遣ったつもりなんだけど?」
「どこがよ!」
「気にしない気にしない」



まだ何やらわーわーと言っているなまえを無視して、耳や頬に口付け、さらにそれを首筋まで下ろしていく。

よし、もらった!

そう思った瞬間・・・





















「いってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


蹴り上げられた。思いっ切り、急所を。
あまりの痛さで声を失い、その場に蹲る。


「忘れてない?脚は元気だっての」


ふん、と床に倒れこむ俺を蔑んだ目で見下していた。








「ちょ、よりによってここ蹴るぅ!?使い物にならなくなったらどうしてくれんのさ!?」
「知るか!この際不能にでもなりやがれ!」
「ひどい!それじゃなまえを満足させてあげられな」
「黙れ――――――!!!」















その後、騒がしい俺たちに堪忍袋の緒が切れたアオイちゃんに、いい加減にしてください!!と追い出されてしまった。

もちろん、俺だけ。














怪我が完治したなまえは、もちろんしばらく口を聞いてくれず、俺はひたすら謝り続ける日々が続くことになった。